Conference Overview 開催概要

1.大会校の挨拶

 日本教育学会第83回大会は、名古屋大学東山キャンパスを会場として、2024年8 月29日(木)、一日空けて31日(土)、9月1日(日)にハイフレックス方式(オンラインと現地会場)で開催します。
 今回の大会は、名古屋大学と愛知工業大学との合同実行委員会方式により開催し、名古屋大学大学院教育発達科学研究科が共催します。共同開催のメリットを活かしながら会場校としての役割を担ってまいります。みなさまのご理解とご協力をお願いいたします。

 本大会も第81回・82回大会にならい、一日目(8月29日)はオンラインのみで「自由研究発表」(一般研究発表とテーマ別研究発表)と「ラウンドテーブル」を開催します。そして次の日(30日)に現地(名古屋大学)への移動日を設けて、二日目(31日)と三日目(9月1日)は現地会場(対面)とオンライン配信により「課題研究」「シンポジウム」「総会」を開催します。
 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

日本教育学会第83回大会実行委員会 委員長 渡邉雅子(名古屋大学)

2.開催日

2024年8月29日(木)、31日(土)、9月1日(日)

3.開催方法

対面とオンラインによるハイフレックス方式

<対面会場> 名古屋大学東山キャンパス

愛知県名古屋市千種区不老町
【名古屋市営地下鉄名城線「名古屋大学駅」下車、徒歩5分】

※詳細は、名古屋大学Webページ「交通アクセス」をご覧ください。
 https://www.nagoya-u.ac.jp/contact/directions.html

<オンライン会場> 日本教育学会第83回オンライン大会会場(大会が近くなりましたらご案内いたします)

4.日程

【1日目 8月29日(木)】オンライン(リアルタイム双方向型)
午前 自由研究発表 9:00~12:00
午後 自由研究発表 12:30~15:00、ラウンドテーブル 15:30~17:30、社員総会 17:45~19:45

(8月30日(金)は移動日)

【2日目 8月31日(土)】現地会場とオンライン配信の併用
午前 課題研究Ⅰ 9:30~12:00
午後 総会 13:30~14:45、シンポジウムⅠ 15:00~18:00、若手交流会 18:15~19:45

【3日目 9月1日(日)】現地会場とオンライン配信の併用
午前 課題研究Ⅱ、シンポジウムⅡ 9:00~12:00
午後 課題研究Ⅲ 13:00~16:00

5.大会までのスケジュール

4月10日(水)自由研究発表(一般研究発表・テーマ型研究発表)・ラウンドテーブルの申込開始
5月8日(水)自由研究発表・ラウンドテーブル申込の締切
7月3日(水)『発表要旨集録』掲載原稿の大会Webページでの受付開始
7月10日(水)『大会プログラム』の閲覧開始/大会参加申込の開始(大会Webページより)
7月24日(水)『発表要旨集録』掲載原稿の提出期限
8月20日(火)大会参加申込の締切
8月23日(金)オンライン大会会場へのパスワード送付(大会参加申込者のみ)
『発表要旨集録』のオンライン大会会場より閲覧開始(大会参加申込者のみ)

6.大会参加費

一般会員2,000円
学生会員無料
臨時一般会員2,200円(税込み)
臨時学生会員無料

7.自由研究発表(一般研究発表およびテーマ型研究発表)

(1)分科会種別と趣旨

会員による研究発表の場として、例年の大会同様、「A 一般研究発表」と「B テーマ型研究発表」を設定します。いずれについても、研究発表を希望する会員は自由に応募できます。「A 一般研究発表」では、研究領域別の分科会を編成します。「B テーマ型研究発表」では、様々な研究課題について焦点化された特定のテーマを設定し、分科会を編成します。

(2)開催予定分科会

下記の分科会の開催を予定しています。ただし、研究発表の応募状況によっては、分科会の名称変更や再編を行うことがありますので、あらかじめご承知おきください。

一般研究発表

A-1 教育理論・思想・哲学
A-2 教育史
A-3 学校制度・経営
A-4 教育行財政・教育法
A-5 比較・国際教育
A-6 教育方法・教育課程
A-7 生活指導
A-8 教科教育
A-9 発達と教育
A-10 技術・職業教育
A-11 幼児教育・保育
A-12 初等・中等教育
A-13 高等教育・中等後教育
A-14 教師教育
A-15 社会教育・生涯学習
A-16 教育心理学
A-17 カウンセリング・教育相談
A-18 特別支援教育・特別ニーズ教育
A-19 図書館・教育情報学

テーマ型研究発表

B-1 市民性教育の課題
B-2 学校のリアリティと教育改革の課題
B-3 ジェンダーと教育
B-4 教員政策
B-5 戦後教育史の諸問題
B-6 教育学の問い直し
B-7 子ども問題と教育・福祉
B-8 厄災と教育学研究
B-9 Educational Issues from Global Perspectives
B-10 教育と平和
B-11 オープンデータと教育学研究
B-12 教育の無償化を問う
B-13 地域コミュニティと教育
B-14 学習者のエージェンシーとコンピテンシー
B-15 教育変革と教師のエージェンシー

(3)発表申込

研究発表をご希望の方は、下記大会用特設ウェブサイトの申し込みフォームに必要事項をすべて書き込んでください。受付開始は4月10日(水)で、締切は5月8日(水)です。申込みはすべてウェブサイト上で行います。申込みいただきますと、自動的に受領確認メールがすぐに送信されます。確認メールが届かない場合は、下記メールアドレスにご連絡ください。

発表申込の詳細は、発表申込ページをご参照ください。
メールアドレス: jera83@educa.nagoya-u.ac.jp

研究発表は、原則として、個人発表、共同発表あわせて、ひとり一本とします。ただし、個人発表をする者でも、口頭発表者(プログラムで○の付く者)にならない場合は共同発表にも申し込むことは可能です。ラウンドテーブルはこの限りではありません(ラウンドテーブルと研究発表の両方とも発表申し込みをすることは可能です)。

発表希望分科会は、「A 一般研究発表」「B テーマ型研究発表」合わせて第3希望までお選びください。ご発表のテーマや応募状況によっては「A 一般研究発表」と「B テーマ型研究発表」の間で移動をお願いすることがあります。

発表時間帯は実行委員会で決定させていただきます。発表の時間帯を特定してお申し込みいただくことはできませんので、あらかじめご承知おきください。

(4)発表資格

研究を発表することができるのは、①本学会の会員で、5月6日以前に2023年度までの会費を納入済みの会員、または②5月6日までに2024年度の入会申込み手続きをとり、2024年度会費を前納した方、のいずれかに限ります。

(5)発表時間

個人研究発表 発表時間25分+質疑5分
共同研究発表 発表時間50分+質疑10分
*共同研究であっても口頭発表者が1名の場合の発表時間は、個人研究発表と同じです。

(6)発表要旨(『発表要旨集録』の原稿)の提出

発表を申し込んだ方は、研究発表の「原稿作成要領」(大会ウェブサイトに掲出)にしたがって発表要旨(『発表要旨集録』の原稿:PDF2頁分)をWeb登録にてご提出(アップロード)ください。分量オーバーの場合、3頁目以降は掲載されませんので、ご注意ください。提出期間は、7月3日(水)から7月24日(水)までです。締切厳守でお願いします。
*『発表要旨集録』に掲載された内容は、科学技術振興機構(JST)の研究情報データベース「J-STAGE」において公開されます。

8.ラウンドテーブル

会員の創意で自主的に企画される研究交流・意見交換の機会です。

(1)申込み方法

開催希望の方は、下記大会用特設ウェブサイトの申し込みフォームに必要事項をすべて書き込んでください。受付開始は4月10日(水)で、締切は5月8日(水)です。申込みはすべてウェブサイト上で行います。申込みいただきますと、自動的に受領確認メールがすぐに送信されます。確認メールが届かない場合は、下記メールアドレスにご連絡ください。

発表申込の詳細は、発表申込ページをご参照ください。
メールアドレス: jera83@educa.nagoya-u.ac.jp

(2)企画者・報告者等の資格

企画者・報告者は、①本学会の会員で、5月6日以前に2023年度までの会費を納入済みの会員、または②5月6日までに2024年度の入会申込み手続きをとり、2024年度会費を前納した方、のいずれかに限ります。非会員が報告者(提案者)となることは可としますが、報告者(提案者)の半数は会員としてください。

(3)発表要旨(『発表要旨集録』の原稿)の提出

企画を申し込んだ方は、ラウンドテーブルの「原稿作成要領」(大会ウェブサイトに掲出)にしたがって発表要旨(『発表要旨集録』の原稿:PDF2頁分)をWeb登録にてご提出(アップロード)ください。分量オーバーの場合、3頁目以降は掲載されませんので、ご注意ください。提出期間は、7月3日(水)から7月24日(水)までです。締切厳守でお願いします。
*『発表要旨集録』に掲載された内容は、科学技術振興機構(JST)の研究情報データベース「J-STAGE」において公開されます。

9.課題研究

(1)課題研究Ⅰ

AIの利活用社会における教育的価値―言語教育を中心に―

企画趣旨
 コロナ禍を推進力に数千億円が投じられた「GIGAスクール構想」に象徴・集約される形で、デジタル化が学校教育に大きな影響を及ぼしている。同時に、2022年1月には「教育データ利活用ロードマップ」も公表され、「学校教育のデジタル化の目的は、学習・教育の方法やその機会を拡張するための条件整備から、ICTによって収集、分析されるデータを軸に教育の実践と政策を再編することへと変容している」(中西ほか,2023, p.45)。このような「『データ駆動型教育』構想」を教育学はどう受け止め、何を問うべきか。
 加えて、OpenAI のChatGPT登場以降、教育における生成AIの利活用が盛んに議論されるようになり、2023年7月には、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の議論を踏まえ、文部科学省から「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が策定されるに至っている。しかし現時点で、教育学の知見がここに十分反映されているか、あるいは教育学者が生成AI の特性を十分理解した上で学校教育への影響を捉えられているかと言えば、必ずしもそうとは言えないのではないだろうか。
 本研究課題では、教育にもさまざまな形で関わりを持つ言語学者・数理論理学者に登壇をお願いし、とりわけ言語教育にフォーカスを当て、AIの利活用によって教育にもたらされる恩恵と、同時に顕在化が予想される諸課題を論じ、見過ごされかねない教育的価値に迫りたい。

【参考】
中西新太郎・谷口聡・世取山洋介(2023)『教育DXは何をもたらすか―「個別最適化」社会のゆくえ―』大月書店

登壇者
・大津由紀雄(関西大学客員教授、慶應義塾大学名誉教授) 「認知科学と決別してのAIの「成功」で鮮明になった外国語教育の目的」
・新井紀子(国立情報学研究所) 「『科学』に足る教育データをいかに取得するか―リーディングスキルテストを巡って―」
・亘理陽一(中京大学)「生成AIは子どもたちからどういう『ことば』を生成し得るか―教室の声と文字―」

司会
・松下佳代(京都大学)・杉田浩崇(広島大学)

(2)課題研究Ⅱ

教育における社会正義と公正性

企画趣旨
 教育において社会正義とは何か、教育の公正性をどのように確保するのか。今日、グローバル社会化や多文化共生社会化、第四次産業革命、新しい公共や市民社会に向けた変化が広がる一方で、教育格差・経済格差の拡大や、リスク社会の進展、正義をめぐる分断と対立の深化にも見舞われている。公教育制度は、異なる社会的、文化的な背景をもつ人びとの違いを越えた何らかの共通文化・共通教養(コモンなもの)に支えられ、それをもとに標準的(スタンダード)な内容やカリキュラムが設計されるが、そのような教育の共通性やスタンダードを形成する正義や公正性の原理そのものに揺らぎが生じている。人種、宗教、言語、地域、文化、ジェンダー、障害、習慣、価値観の差異や多様性がますます顕著にあらわれる中で、社会的、経済的に不利な条件に置かれている子どもや、「主流」とされる立場からは周辺に置かれたマイノリティの子どもに対して平等で公正な教育アクセスを確保することも求められている。たとえば、今日、SDGs4では「すべての人に包摂的かつ公正で質の高い教育」を確保することが目標に掲げられ、現行の学習指導要領においても「持続可能な社会の創り手」の育成のもと、「誰一人取り残さない」社会の実現に向けた教育の考え方が反映されている。だが、本当の意味で誰一人取り残さず、すべての子どもたちに質の高い公正な教育を保障することは容易ではない。こうした状況下で、教育の社会正義と公正性をどのように構想するのか、異なる文化と価値観を尊重した教育アクセスの保障やカリキュラムの多様性、格差是正や不平等の克服へと向かう教育をどう実現するか、さまざまな分断と不寛容を越えて対話を促し、社会の変革を担う市民(シティズンシップ)をどう形成するかといった事柄は、喫緊の課題として浮上している。そこで、本課題研究では、教育における社会正義と公正性のテーマにかかわる理解を深め、その実現に向けた具体的な方略を考えることにしたい。
 オンラインによる同時通訳あり。

登壇者
・伊井義人(大阪公立大学)
・岡村美由規(広島大学)
・久志本裕子(上智大学)
・佐藤 仁(福岡大学)

指定討論
・James Williams(George Washington University)

司会
・杉村美紀(上智大学)・上野正道(上智大学)

Social Justice and Equity in Education

 What is social justice in education and how can we ensure educational equity? Today, while globalization,multiculturalism, the fourth industrial revolution, and changes toward a new public and civil society are spreading, we are also suffering from widening educational and economic disparities, thedevelopment of a risk society, and deepening division and conflict over justice. The public education system is sustained by some kind of common culture and education that transcends differences among people of various social and cultural backgrounds, and standard content and curricula are designed based on such common values, but the principles of justice and equity that form such commonality and standards of education are themselves wavering. As differences and diversity in race, religion,language, region, culture, gender, disability, customs, and values become increasingly evident,there is also a need to ensure equal and equitable access to education for socially and economically disadvantaged children and for minority children who are marginalized by ”mainstream” status. Today, for example, SDG 4 sets the goal of ensuring ”inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all,” and the current Courses of Study reflect the concept of education to realize a society in which ”no one will be left behind,” based on the development of ”creators of a sustainable society.” However, it is not easy to ensure that no one is left behind in the true sense of the word and that all children are provided with a high-quality and equitable education. Under these circumstances, we need to think about how to envision social justice and equity in education, how to guarantee access to education that respects different cultures and values, how to realize curriculum diversity, how to achieve education that rectifies disparities and overcomes inequalities, how to encourage dialogue that goes beyond serious social divisions and intolerances, and how to form citizens who will be responsible for social change. These questions have emerged as urgent social issues that should be resolved. In this research project, we would like to deepen our understanding of the themes of social justice and equity in education and consider concrete strategies to realize them.

Panelist: Yoshihito Ii(Osaka Metropolitan University)How Should We Understand Social Justice and Equity in Education Policy?: Focusing on Australian and Japanese Contexts
Miyuki Okamura(Hiroshima University)Social Justice in Question: Bolivian Education Reforms and the Indigenous and Teachers’ Unions Movements
Hiroko Kushimoto(Sophia University)Issues of Education and Social Justice from the Perspective of Muslims as a Global Minority: The Case of Malaysia
Hitoshi Sato(Fukuoka University)Envisioning Social Justice and Equity in Teacher Education: What Can We Learn from the Discussions in the U.S.?
Discussant: James Williams(George Washington University)
Moderators: Miki Sugimura(Sophia University),Masamichi Ueno(Sophia University)

(3)課題研究Ⅲ

なぜ、日本の公教育は、不自由で非包摂的なのか?

企画趣旨
 近年、従来の社会や公教育において周縁に置かれ排除されてきた人々のニーズに応え包摂しようとする取り組みは拡大してきた。だが、標準法を変えずに加配で対応する、多様な教育の機会は確保してもそれが選択肢の拡大とその周縁化にとどまるといった具合に、公教育の本体は変わらない状況になってはいないか。そうして、非多様で不自由な状況は変わらず、むしろ深刻化してはいないか。これに対して、マイノリティだけでなく、マジョリティ(メインストリーム)も含むフルモデルの再構築が必要ではないか。
 本課題研究では、日本の教育システムの非多様で不自由な現状を確認しつつ、そのような状況が生まれ、深刻化する構造的な要因に迫り、乗り越える展望についても議論していきたい。こうした問題は、マイノリティの教育やオルタナティブな学びの場や福祉等、公教育制度の境界や周縁部分にフォーカスする研究者によって主に論じられてきた。これに対して、本課題研究では、必ずしもそうした研究課題を専門的に研究してきたわけではないが、しかし、学校内外に拡大する選択肢も含め、公教育の本体や全体をトータルに考え直す問題意識をもった研究者に登壇をお願いし、そうしたある種「素人」性のある登壇者からの問題提起に対して、そうした問題を真正面から扱ってきた指定討論者が応える形で進めたい。これにより、非多様で不自由な教育をめぐる従来の議論の仕方を問い直し、包括的な公教育の問い直しに向けた問題圏を構成することをめざしたい。

登壇者
・西村拓生(立命館大学)「『妨げているのは何か?』をめぐるナラティブ、あるいはお人好しとシニシズムの間で―教育哲学・思想研究の立場から―」
・石井英真(京都大学)「不自由さを拡大する公教育改革の論理と癖―教育方法学・教育実践研究の立場から―」
・福嶋尚子(千葉工業大学) 「『隠れ教育費』から見る公教育の条件整備と権利保障の課題―教育行政学・教育法学の立場から―」

指定討論
・桜井智恵子(関西学院大学)
・赤木和重(神戸大学)

司会
・清水睦美(日本女子大学)

10.公開シンポジウム

(1)公開シンポジウムⅠ

現場の長時間労働解消に向けて教育学が取り組むべきこと

企画趣旨
 中央教育審議会がいわゆる働き方改革答申において、「子供のため」の「崇高な使命感」が長時間労働の一因となっていると指摘したのは、2019年1月のことであった。これまで教育界では、現場、行政、学者のいずれもが、「子供のため」に必要な教育のあり方を模索してきた。そのモデルが、反省を迫られることとなった。
 あれから、はや5年が経過した。この間、最新の勤務実態調査(2022年度中)の結果が公表され、また給特法の再改正も検討されている。現場では、児童生徒の目の前に学級担任や教科担任がいない「教師不足」の問題が顕在化している。
 働き方改革の必要性が叫ばれるなか、本シンポジウムでは、全体として次の2点に関心を寄せながら、現場の長時間労働解消に向けて教育学が取り組むべきことを考えていきたい。
 第一の関心が、学校の具体的な現実、教員の日常の目線を共有することである。まずは現場の声、現場の課題を学会として共有することを基本としたい。
 第二の関心が、長時間労働の解消に向けて教育学者に何ができるかを考えることである。教師不足は日本の学校教育の崩壊につながる。教育学のこれまでのスタンスを反省しつつ、教育学が働き方改革にいかに資するか、未来志向的に検討したい。
 本シンポジウムでは、研究者のみならず、教員など教育の実践に関わる者も報告者にくわわることで、全体として上記の2つの関心に応えていきたい。

報告者
・寺町晋哉(宮崎公立大学・准教授)
・跡部千慧(東京都立大学・助教)
・西村祐二(岐阜県立高校・教諭)
・氏岡真弓(朝日新聞社・編集委員)

指定討論者
・首藤隆介(名古屋造形大学・教授)
・保田直美(大阪成蹊大学・准教授)

司会者
・今津孝次郎(星槎大学大学院特任教授・名古屋大学名誉教授)

企画担当
・内田良(名古屋大学)
・渡邉雅子(名古屋大学)

(2)公開シンポジウムⅡ 

教育福祉研究の課題:子ども保護と学びの保障

企画趣旨
 教育学は、学びと成長の保障を軸に子どもの権利を考えてきた。その基礎に立って、困難を抱える子どもの現実をこれまで以上に正面から受け止め、それぞれに相応しい権利保障を構想することの必要性が認識されている。このシンポジウムでは、経済的困窮世帯の子どもへの学習支援と、虐待を受ける子どもとその家族への支援それぞれの現実と課題を整理し、子どもの権利保障を考える。

登壇者
・辻 浩(名古屋大学研究員)「子どもの権利保障と教育福祉研究」
困難を抱えた子どものことは、これまでの教育学で空白部分が多く、また、わかりやすい課題で正義にもかなっているので、多くの人がものを書くようになっている。この報告では、子どもの権利保障ということに照らして根本的に考えてみたい。

・川口洋誉(愛知工業大学)「子どもの権利と学習支援の可能性」
子どもたちの困難に向き合い信頼関係をベースに居場所づくりに努める学習支援がある一方、民間の学習塾や個別指導教室による学習支援は教科指導や受験対策にウェートを置いている。子どもの権利に着目して、教育福祉実践としての学習支援の意義と可能性について検討したい。

・沢田直人(元小牧市子育て世代包括支援センター・社会福祉士)「児童虐待支援における子どもの困難性と発達の権利保障の課題について」
経験主義的な議論は好まないが、現場で感じた子どもと家族に対する支援の制度や組織の課題を子どもの発達の権利保障の視点で考察したい。権利論の主報告や学習支援の課題報告とリンクできるようにしたい。

司会
・河野明日香(名古屋大学)

企画担当
・中嶋哲彦(愛知工業大学)

11.若手交流会

大会二日目8月31日(土)の18:15~に対面およびオンライン(Zoom)のハイフレックス形式で開催します。

自分がなりたい研究者像を描こう―early career から middle career への歩み―

開催方法
前半(話題提供):ハイフレックス 後半(ディスカッション):対面のみ

企画趣旨
 本企画で、研究者としてこれからキャリアを構築していくアーリー・キャリアの研究者たちが、ミドル・キャリアの研究者の経験に学びながら語り合うことを通して、自らの歩みたい道を思い描くことができる場を設けたい。
 アメリカ・アジア・ヨーロッパで共同研究を進める3名のミドル・キャリアの方々をお招きし、キャリアを切り開く時にどのような模索や決断が行われたのか、公の場ではあまり語られることのない貴重なお話をしていただく。その後、小グループに分かれて参加者相互で交流する。キャリアの長短にかかわらず、幅広い会員の参加を歓迎する。

【プログラム】
司会:影山奈々美(東京大学大学院 博士課程院生)
趣旨説明:佐久間亜紀(若手育成委員会委員長、慶應義塾大学)

話題提供者
・鈴木悠太(東京工業大学)
主著『教師の「専門家共同体」の形成と展開—アメリカ学校改革研究の系譜—』勁草書房,2018.
共同研究:アメリカ・アジア・ヨーロッパ
・西野倫世(大阪産業大学)
主著『現代アメリカにみる「教師の効果」測定—学力テスト活用による伸長度評価の生成と功罪』学文社,2024.
共同研究:アメリカ
・奥村好美(京都大学)
主著『〈教育の自由〉と学校評価—現代オランダの模索—』京都大学学術出版会,2016.
共同研究:オランダ

【趣旨】
昨年度、若手育成委員会で行ったアンケート調査によると、アーリー・キャリアが抱える困難の中で、「研究の見通しへの不安(77.1%)」と「将来の職への不安・迷い(72.2%)」が高い割合で示された。また、同調査では、ブレイクスルーの経験も自由回答として語られた。その中では、「達成感を得る(博論の提出や査読論文の採択)」「就職をする」「人や研究テーマとの出会い(留学や海外研究)」がきっかけとなったという回答が得られた。
これらの調査結果を踏まえ、今回はとりわけブレイクスルーの経験に焦点化し、1. 博論の執筆・出版、2. 就職、3. 国際的な共同研究の3つをキーワードにして企画した。

・論文投稿について、投稿先はどう決めるのか(国際学会も含めて)。
・査読論文が採択されるにはどうすればよいか。
・研究(修士・博士課程)を進める中で迷いや見通しが持てない時期に何をしたのか、また、振り返って何が重要であったと感じるか。
・就職のために、どのような活動をしたのか。
・博士課程を修了した後に、指導教員がいなくなることへの不安について。
・在外研究をどのようにして実現したのか。
・海外の研究者とのコネクションをどのように作るのか。

今回の話題提供者には、これらの経験をお話いただく。それぞれ置かれた環境や歩む道は異なったとしても、ミドル・キャリアが何を大事にし、どのように判断・選択をし、経験を重ねてきたのかを聞くことは、アーリー・キャリアが自らの立場や状況に置き換えて未来を描くことの支えになるのではないか。
また、企画の後半では、アーリー・キャリア同士が語り合う時間を設け、他者と未来のビジョンを共有することで、互いにインスパイアし合い、自分の将来のビジョンや、ネットワークを広げることの一助になることを願う。

【スケジュール】
18:15-18:25 開会、趣旨説明(10分間)
18:25-19:10 話題提供(45分間)
19:10-19:30 話題提供を受けて参加者同士のディスカッション(20分間)
19:30-19:40 全体交流(10分間)
19:40-19:45 総括、閉会(5分間)

【開催方法】
話題提供(19:10)までは対面とオンラインにて、ディスカッション以降は対面のみで開催させていただきます。

事前参加登録】
ご参加予定の方は、以下より事前参加登録をお願いいたします(当日参加も歓迎いたします)。
https://forms.office.com/r/eFa0qL4efg

・案内チラシ

12.託児支援

大会2日目または3日目に開催される課題研究、シンポジウム、若手交流会において、司会、登壇者、指定討論者、話題提供者として現地で参加される方につきましては、当該企画に参加するための託児サービス(自宅でヘルパーを依頼する場合も含む。)を利用した際の費用の半額(1日当たり上限5,000円)を、実行委員会で負担させていただきます。7月30日までに実行委員会にご連絡ください。なお現地では託児場所は用意しておりませんが、授乳等に必要なスペースはご用意いたしますので、受付にてお問い合わせください。

13.その他

 懇親会につきましては、開催予定はございません。お食事等につきましてはそれぞれのグループでお楽しみください。
 大会実行委員会では、ご参加のみなさまに安全かつ快適にお過ごしいただけるよう万全を尽くしたいと存じます。
 みなさまのご参加を心よりお待ち申し上げます。